ポメラニアンとは?

ポメラニアンは、ドイツ原産の小型犬です。全身が密な被毛に覆われており、胸もとの豊かな被毛、背中側に巻いたしっぽ、尖った立ち耳が特徴です。

引き締まった体型で、四肢のバランスのよい犬種です。体重は2~3kg、体高は20cm、カラーはブラック、オレンジ、クリーム、ホワイトなどバリエーション豊かです。

一般社団法人ジャパンケネルクラブによると、犬種グループは「原始的な犬・スピッツ」に分類され、役目は番犬及びコンパニオン・ドックとされています。

もともとが中型犬だったため、小型犬にしては大きくなる個体もいます。

歴史は古く、ノルウェーやフィンランドなど寒さの厳しい地域でそり犬として活躍していた大型のスピッツ系の犬がポメラニアンの祖先とされています。

祖先犬は、ドイツへ渡り改良され、ジャーマン・スピッツという犬種として固定されました。この犬種には5種類の大きさがあり、トイスピッツと呼ばれる一番小さいサイズがポメラニアンにあたります。

1888年に、ビクトリア女王がポメラニアンをイギリスへ持ち帰り、女王自らの手で改良され、当時は中型犬ほどの大きさだったポメラニアンが小型化していきました。

改良が進み、毛色のバリエーションが増え、1892年にアメリカで正式な犬種として登録されました。

ポメラニアンという名前は、ドイツとポーランドの国境にあるポメラニア地方原産の犬種であることから付けられました。

ポメラニアンの見た目には2種類のタイプがあり、たぬき顔とキツネ顔と呼ばれています。
たぬき顔はマズルが短く丸顔で優しい印象をしています。

キツネ顔はマズルが長く凛々しい顔をした祖先のスピッツの特徴を残しています。キツネ顔のポメラニアンのほうが体格がしっかりしていて大きくなる傾向にあります。

ポメラニアンの性格

ポメラニアンは、賢く、好奇心旺盛、周りをよく観察していて状況判断が上手です。飼い主には従順で、学習能力も高いのでしつけはしやすい犬種です。

その反面、神経質で警戒心が強い面も持ち合わせています。

番犬としては優れていますが、そり犬が祖先だったため、その気質を引き継いで気が強く、よく吠える個体もいます。
警戒心が強すぎるあまり、むやみやたらに咬んだり、吠えたりするような犬にならないために子犬の時期からしつける必要があります。

子犬の時期から家族以外の人や犬に慣れさせる訓練をするとよいでしょう。

ポメラニアンのお世話

お世話には、ブラッシング、適度な運動、しつけ、口腔内ケアなどが挙げられます。

ポメラニアンには毎日のブラッシングが欠かせません。スリッカーブラシやコームなどで毛並みを整えてあげましょう。

ポメラニアンの被毛は、ダブルコートと呼ばれる二重毛構造になっています。ダブルコートは、保温や保湿効果のある密なアンダーコートと外部の刺激から皮膚を守る役割のオーバーコートから構成されています。

ポメラニアンの毛質は、毛が絡まりやすく、すぐに毛玉やもつれができてしまいます。春と秋には換毛期があるので、ブラッシングをして抜け毛を取り除いてあげましょう。抜け毛や毛玉をそのままにしておくと、通気性が悪くなり、蒸れてしまうため細菌が繁殖して皮膚トラブルの原因になります。

トリミングに出して、プロに毛のお手入れを任せるのもよいでしょう。ポメラニアンの豊かな被毛を活かして、柴カットやテディベアカット、たぬきカット、サマーカットなど様々なカットスタイルを楽しむこともできます。

ストレスが発散できないと無駄吠えの原因になったり問題行動を起こしたりします。適度に運動をさせてストレスを発散させてください。ポメラニアンは激しい運動や長時間のお散歩は必要ありませんが、15分程度の短時間でもお散歩はしてあげましょう。お散歩は適度な運動にもなり、社会性を身に付けさせることもできて、しつけにもよいです。

子犬の時期からしつけもしっかりと行ってください。本来は、賢くて飼い主に従順な犬種なので、しつけはしやすいです。ポメラニアンの性格を活かし、遊びながら学習させたり、褒めたりしながらしつけをするとよいでしょう。体罰や時間差で叱るようなことはせず、覚えるまで根気強くしつけをしていくことが大切です。

マズルが小さく、歯が密接に生えているポメラニアンには口腔内ケアも必要です。小さな口には食べかすが残りやすく、歯垢や歯石の原因になります。定期的に歯ブラシや歯磨きシートで口腔内のお手入れをしましょう。小型犬は、歯が上手く生え変わらず、乳歯が抜けていない状態で永久歯が生えてきてしまうことがあります。この状態を乳歯遺残といい、歯並びや噛み合わせが悪くなります。このような口腔内の異常も日頃から確認できるようにしておきましょう。

ポメラニアンを飼うときの注意点

室内飼いが基本となるので、室内環境を整える必要があります。
ポメラニアンは小型犬で骨が細いので、骨折の事故が多く、段差や落下などには十分気を付けましょう。普段生活している場所の段差をなくしたり、高い場所に登ったりしないように工夫をしてください。

毛の性質上、暑さには弱い犬種です。夏場は涼しい時間帯に散歩をしてください。エアコンの効いていない室内や車内に長時間お留守番させておくのは避けましょう。熱中症になる恐れがあります。

ポメラニアンは、小型犬特有の病気を発症しやすいです。小型犬特有の病気とは、膝蓋骨脱臼、気管虚脱、流涙症などです。

膝蓋骨脱臼

膝蓋骨脱臼とは、後ろ肢の膝のお皿が外れてしまうことです。膝がポキポキと鳴ったり、肢を引きずる、ジャンプができなくなるといった症状が出ます。ほとんどの場合が経過観察となるので、症状が悪化しないようにフローリングに絨毯を敷くなどして普段生活している場所は滑らないように対策しておく必要があります。

気管虚脱

気管虚脱は呼吸時に気管が潰れてしまい、呼吸困難になる病気です。原因は、興奮状態にあるときや激しい運動をした後、ストレス、肥満です。首輪の締め付けで発症することもあります。対策としては、興奮や激しい運動を避けることです。肥満にも注意して、エサは適切な量を与え、体重管理を行いましょう。首輪をハーネスに変えることで症状が緩和することがあります。

流涙症

流涙症は涙が異常に分泌されてしまい、目の下が赤茶けてしまう病気のことです。「涙やけ」とも呼ばれています。原因には、鼻涙管の詰まり、逆さまつげ、異物、アレルギーなどがあります。ほとんどの場合が経過観察になるので、目の周りを清潔に保つケアが必要になります。湿らせたコットンやお手入れシートで目ヤニや涙を拭き取ってあげましょう。目の周りのケアをするときは眼球を傷つけないように注意してください。

ポメラニアン特有の病気「アロペシアX」

また、ポメラニアン特有の病気もあります。アロペシアXといわれる病気で、「ポメラニアン脱毛症」とも呼ばれています。毛の生え変わるサイクルが止まってしまい体幹部が左右対称に脱毛してしまう病気で、原因が判明していません。健康上の問題はないとされていますが、脱毛という症状には他の病気が隠れている恐れもあるので獣医師に相談しましょう。

ポメラニアンは10年以上生きます。ケア次第で、多くの時間を共にするパートナーとなるので、お迎えする際は終生飼育が可能か確認し、飼育環境をしっかりと整えてください。
不安なことがあれば、ショップや動物病院に相談しましょう。